HANDS

「おいで、虎次郎」

首輪を外している間も大人しくて、賢いなぁ。
洗面器の匂いを嗅いだりして、特にびびってる感じもないし。

でも、シャワーをかけると急に落ち着きがなくなって、にゃあにゃあ鳴きながらうろうろ歩き回り始めた。

「ありゃ、やっぱ水が嫌いなのかなー?」
「かもなー」

リュウが買ってきていた猫用シャンプーを手のひらに出してみると、あまりにも毒々しい色に驚いた。


「ちょっと、これ大丈夫かな?
すごい緑色なんだけど……」

「あ?」

あたしの手首を掴んで、シャンプーの匂いを確かめるリュウ。
顔が、近い。


「匂いは普通だし大丈夫だろ」

確かにフローラル~な感じ…。

泡立てて、虎次郎の背中に乗せた。

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