HANDS

絡みつくようなドラゴンからどうにか逃れてベッドを下りた。


洗面所へ向かうあたしのあとを虎次郎がついてくる。

「ついて来られても、あたしはゴハンあげる権限ないんだよー」

それでも虎次郎はにゃあーと長い声で鳴いている。
リュウが起きるまで待ってくださーい。


勘でリモコンを手にして電源ボタンを押すと、テレビがついた。
おし。

マスカラを塗っていると、リュウがむくっと起き上がった。

「あ、おはよー」

「あー。お前居たんだっけ」
あくびをしながら、ベッドから見下ろしてくる。


「ねえ、ユリってダレ?」
「……は?」

寝起きのかすれた声が、不機嫌さをさらに際立たせている。

怖。
< 93 / 192 >

この作品をシェア

pagetop