Cherry
「はぁ~っ」
もう一度、深いため息をつく
するとケータイが鳴った
もちろん。みーくんからだ……
「……はい」
「姫っ。どこにいるんだっ」
うわっ
めちゃくちゃ怒ってる
「え、あの……そうそう忘れ物!学校の用意ちゃんとしたはずなのに忘れ物に気がついて、家に帰ったの」
……我ながら、すごい苦しい嘘……
少しの沈黙の後
「……そう。でも、黙っていなくなったら心配するだろう」
みーくんの低い声からは何も感情を読み取れなかった
「ごめんね」
私が謝ると
「姫、夕べの事なんだけど……」
ドキッ
反射的に聞きたくない
そう思って
「あのっ、お母さんが呼んでるから…切るね」
そう言って一方的にケータイを切った
だって
――姫、夕べはごめん――
でしょう?
ごめんはイヤ
あのキスを否定されたくない