Cherry


子供の頃


父も母も仕事が忙しくて


おじさん、おばさんが実の子供のように世話してくれたけど


仏壇の赤ちゃんの遺影を見るたび


自分はこの赤ちゃんの代わりなんだって思った



将来も医者になって

病院を継ぐ事が決まってて



父も母も結局


跡取りとして自分が必要なだけなのかな


そう思うと寂しかった


自分は何の為に存在してるのか



誰かの代わりとして?


跡を継ぐ道具?



自分の存在価値はそれだけなのかな………



そんな事を考えてた時



姫が産まれた



それは小さくて小さくて


だけど



赤ちゃんの姫の手のひらに
オレの指を乗せると
力強く握りしめた



オレの顔を見て
笑うようになった



オレの後を追うようになった



「みーくん大好き」って言うようになった



姫は
誰かの代わりじゃなく
跡取りとしてじゃなく


そのままのオレを


真っ直ぐ


必要としてくれる



そのままのオレを


求めてくれる



オレは……

もう寂しいなんて
思わなかった



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