Cherry



「………嫌なんだよ」



みーくんが小さな声で言う




「………え?」



私が聞くと




「オレが…嫌なんだよ」




悔しそうな表情で


真っ直ぐ私を見る




「姫に……………触るのは………オレが許せない……」



ドキッ……



みーくんは
私の肩をつかんでた手を外した




「とにかく…うまく、避けろ」




そう言って


みーくんは
カンファレンスルームを

出て行った




1人残された
カンファレンスルームで



私は間違ってないと思う


だって川田さんは5年前奥さんに先立たれて



たまに息子さんがお見舞いに見えるだけ



川田さんは寂しいんだ



もちろん触られるのは嫌



だけど触った後



川田さんは


子供がイタズラした後みたいに



少し元気になる




だから私は少しくらい我慢しようって思ったんだもん




看護師として我慢するべきだ…



そう思ったんだもん




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