霧の向こう側
一話・占い師と少女
すべてその日に起きた事だった。少女は近所の中学に通っている極普通の中学生である。
 名を“轟加奈子”といった。
彼女の通学路には、なかなか目を楽しませてくれる物が沢山ある。
 例えば商店街。新製品を派手に宣伝するスーパーや、今流行りのチョコパフェを食べさせてくれる喫茶店や、雑誌で掲載された新曲を早く入れてくれるレコード店などが目白押しにぎっちりと並んでいる。
友達と学校の帰りにちょっと寄り道出来る場所には、遊園地が有った。
 ここではお決まりの観覧車やジェットコースターの他に頻繁に企画物が催される。
 夏の花火大会でもないのに、花火が上がっている時は、アトラクションや色々なイベントがあっている場合が多い。
 そして、毎週金曜日には、その遊園地の一角で、占星術を行う人が黒いテントを張った。
 その人は、歳はどうみても七十は越えている、少し陰気そうな“お爺さん”である。
 いつも、白地に星と月の柄のトレーナーを着込み、下はブルージーンズのズボンを履いていた。
 ……どうみても、占い師には見えない風体だったが……しかし、彼の占いは殆ど九十九パーセントの的中率を誇っていた。
「……加奈子……さん?貴女は、加奈子という名前ですよね」
 もう辺りは暗くなりかけた夕暮れである。
 加奈子は、学校で所属しているクラブを終えて家に帰る途中だった。
 友人三人と通学路から少し外れるが、このまま別れるのも何だしという気楽さで、そのままずるずると遊園地に寄ったのだ。
 
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