夢からなるキミへ
『もう…もう…』

僕は言葉が詰まってその先を言えなかった。

『もう手遅れなんだ…』

ミズキは僕の言おうとした事をわかっていた。

僕には何も言えなかった。

『そっか〜、あたしガンなんだ。ケイゴ、本当の事言ってくれてありがとう』

ミズキは振り返り笑顔で僕にそう言った。

自分の病状を知っても、平然として何故か明るく元気で…笑顔を絶やさないミズキを見た僕は、辛くて辛くてたまらなかった。

『お医者さん遅いなぁ…ちょっと呼んでくるね』

僕は妙に明るく振る舞うミズキを見れなくて、そう言って部屋を出て行った。

僕は廊下に出て、待ち合い室の椅子に座り一人考え込んでいた。

そして待ち合い室でお医者さんと合流した僕は、ミズキの病室へと戻った。

『ミズキさん。お医者さん連れて来ました…ミズキさん!?』

しかし、ミズキの姿は病室にはなかった。
< 48 / 92 >

この作品をシェア

pagetop