暗黒ノ世界
プロローグ
目の前に人が立っている。何かを確認するかのように小さなノートを見ている。女性だろうか。しかしその女性、似てる。雰囲気といい、目といい、僕の親友に似ている。
公園のブランコに揺られながら、僕はその女性を見つめている。肩までしかない、女性にしては少し短めの黒い髪、透き通るような蒼い瞳、日本人形のような不気味さと綺麗さを持ち合わせたその女性は、こちらに気づくと、ニコッと笑い、話し掛けて来た。
「貴方、名前は?」
「ずっと貴女を見つめていた僕が言うのもあれですけど、名前を尋ねる前に、普通は自分から名乗るものじゃないですか?」
身長は170位だろうか。出る所は出て、出ない所は出ないその美しいプロポーションの女性は、多少驚いた顔をしたが、直ぐに笑顔に戻り自己紹介をした。
「ごめんなさいね。私は加藤沙奈恵です」
「加藤…ですか。やっぱりそうでしたか」
「やっぱりとは、どういう事ですか?」
沙奈恵さんは頭にクエスチョンマークを浮かべながら、僕に聞いてくる。
「親友と同じ名字なんですよ。雰囲気や、目の形や色も、親友の雄太に似ているもので。違ってたらすいません」