涙が枯れるその日まで
陸「着いたぞ。降りろ」

病院の駐車場に車を停め、陸くんは言った。

私「私行かないよ。何でここまで手が込んでるわけ?やり過ぎでしょ?本当に笑えないから」

陸「お前いい加減にしろよ?ガキみてえな事言ってんじゃねえよ」

明らかに陸くんはキレていた。

私「ガキじゃないもん…」

陸「もう何でもいいからついて来い。ついて来るだけでいいから」

陸くんはそう言って、私の腕を掴んで強引につれて行った。

もう時間が遅かった為、夜間入り口から入ると祐司がいた。

祐「みぃこ遅かったな」

陸「涼は?」

祐「ああ。こっちだ」

祐司に案内された部屋には涼の家族がいた。

そして、その前に涼がいた。

私が入るのをためらっていると、陸くんに引っ張られて部屋に入った。

奈「来てくれてありがとう」

奈々さんは泣き腫らした赤い目で、無理に笑った。

涼は整った顔立ちが際立った、穏やかな顔をしていた。

笑っている様に見えたが、私の好きな笑顔ではない、大人びた笑顔だった。

私達が来たのが遅かったからか、涼の顔はすでに血の気がなく、死んでいるのは明らかだった。

それでも私はその現実を認める事はできなかった。
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