涙が枯れるその日まで
数日後、私は地元に帰り涼の家へ行った。

置いたままの荷物を取りに来たの。

今まで一緒に過ごした想い出がいっぱい詰まったこの家に来るのが怖くて、来れずにいたんだ。


涼は元々家族で住んでいた一軒家に、一人で住んでいたの。

2階の涼の部屋に入った途端、大好きな涼の匂いに包まれた。

その瞬間、私は涼が隣にいる様な錯覚に陥り、私は家中を走り回って涼を探した。


いつも座っていたリビングのソファ。

いつもタバコを吸っていたベランダ。

スタンディングバーだって言いながら、いつも立ったままビールを飲んでいたキッチン。

涼のベッドやクローゼットの中。

いくら探しても、見つかるはずもなくて…

新しい財布をあげたのに、前のボロボロな財布が未だに置いてあるのを見た瞬間、涙が流れた。

私はこの時やっと、涼の死を認めたんだ…

1ヶ月分の涙が一気に溢れ出した…
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