六花の騎士
悔しくて唇を強く噛んだ
背後で剣を鞘に納める音がした
振り向き、負けた悔しさで王族の前であることも忘れてミーヤは叫ぶ
「なぜわざと隙を作っているんです!私を侮っているんですか!!」
怒気を露にするミーヤにティアは告げる
「わざとではありません。確かに武人ならば隙がなくて当然でしょう。しかし私は私のまま此処にいる」
紫紺の眼差しは真っ直ぐにミーヤを射ぬく
「私は騎士として戦います。しかし私達は皆、自然界の極一部でしかありません。だから、私は私のままぶつかったまでです」
下手な小細工はいらない
自分の在るべき姿で戦っているまでだ
そう言われ、ミーヤは目を見開いて押し黙った
(………何なのよこの人)
複雑な感情が渦巻く
まるで自分はちっぽけな生き物になったような気がした