六花の騎士
ゆったりと進む馬車の傍にティアとキャリベルは、白馬に乗って馬車の後ろからついてきていた
「ごめんなさい。貴方の主にトーワ様が失礼な態度をとってしまって……」
思い出すだけでため息がこぼれる
トーワは、普段から愛想がいいほうではないが、メノリに対してはいつも以上に愛想が悪い
馬車に乗るときも愛想笑いさえ見せないほどだ
「いえ、メノリ様でしたら大丈夫でしょう」
実際、メノリは大丈夫では無いのだが、ティアはとりあえずそういった
「ありがとう。そう言ってもらえると助かるわ」
大丈夫ではないだろうが、ティアの言葉にキャリベルは苦笑するにとどめた
そこでティアはふと、ある事に気が付いた
キャリベルの左眼は、赤い薔薇と棘(いばら)の飾りで隠されている
右眼は淡く紫がかった紅色(べにいろ)だった
「さあ、もう一息でローゼッタシティよ」
軽やかに手綱を打ってキャリベルは馬を走らせる
不思議な色合いだ、と思いながらティアも手綱を切って馬を走らせた