六花の騎士
ネイテル城の中庭は広大で小さいが湖(みずうみ)がある
ほとりには白い花が咲き乱れていた
キャリベルとティアはその白い花が絨毯(じゅうたん)のように咲く間を通る
ティアは湖のそばに人影を見つけた
「メノリ様、新しくメノリ様付きになりました六花の騎士、ティア・ローズをお連れいたしました」
キャリベルは正式な礼をした
すると湖を覗き込むようにして座っていた少女が振り向いた
真っ直ぐな長い髪は真紅
湖のように透き通る青の瞳
儚げな美貌はまだ幼い
少女は驚いた顔をしていたが、すぐに立ち上がり2人をきりりとにらんで第一声を叫んだ
「騎士なんていらないわ!!何度言ったら解るのよバカ!!」
少女、メノリは紺青色のドレスを翻(ひるがえ)して中庭から走り去って行った
「…これは、どういうことですか?」
別に気を悪くした風もなくただ驚いたように、ティアが問うと、キャリベルは気まずそうに答えた
「………えーっと、メノリ様は最近、王族に上がったばかりで…」
王族は、20歳までに髪が紅く染まれば身分差も無く、ネイテル城に召し上げられる
「だから、今はとても不安定な状態なのよ……」
「…はぁ」
メノリの走り去った方をティアは見つめた