六花の騎士
小さな町は穏やかな所だった
眺めているにはちょうど良い暖かい雰囲気があった
二階の窓からトーワは町を眺める
くるくる働き回る子供に花を売る少女
心暖まる光景もトーワを慰めはしない
(……どうせ……もう帰れない)
幼いながらに、トーワはこの赤い髪の意味をわかっていた
親との決別は永遠であるということを
(……だから、名前も捨てなくちゃならないんだ……)
王族になった者は、名を捨てる
一部だけ残して、それが呼び名になる
トーワはそれがなぜかとても辛い気がするのだ
「トーワ ………」
最後に自分の名を呟いて、トーワは膝に顔を埋める
日が暮れようとしていた