六花の騎士
中庭のすぐ近くだった
ネイテル城の中庭は湖だけではなく、小さな森のように樹木が並んでいる
メノリはそこが好きだった
神官という変な人達が来て、突然ここに連れて来られた
そして広く豪華な部屋をもらったが、そんなのちっとも嬉しくはない
ここにはおばあさんも友達も誰もいない
あんなに広い部屋だって一人きりでは寂しいだけだ
柔らかな草に寝転がる
華奢な体をうずめてメノリは顔を歪める
先ほど見た白い軍服の女の人
…………あれは嫌だ…
メノリは思う
王族、それが何を示すかはほとんど知らない
だけど、この世界になくてはならない存在だということは知っている
たが自分がそんな存在だということが信じられない
ギュッと目をつむっていると、近くの茂みが突然動いた
「だっ、誰!!」
寝転ろんでいたメノリは、半身を起してその茂みを見やる
「……ここにいらっしゃいましたか…」
ガサッと茂みから出てきたのは、先ほど怒鳴りつけた自分付きの騎士だった
ポカンとしていると目の前の女騎士は紫紺の瞳でじっと見つめて来る
「……お側に、座ってもよろしいですか?」
メノリは少し驚いた
怒鳴られたのだし気を悪くしたかと思ったのに……
彼女の瞳がただ静かだったので、メノリはちょっとだけ警戒心を解いた
「……どうぞ」