六花の騎士
ティアは跳びずさり、水をかわす
(確か、王族には特殊な能力がある……水か)
更に追いすがる水を跳躍してかわした
剣を持っていたが、まさかメノリに向けるわけにはいかない
メノリは自分の能力をまだ使いこなせないのだ
その証拠に、水の動きが殺意を持っていない
「メノリ様、落ち着いて下さい」
なおも淡々と言う
だが言葉は届かない
水がティアの周りを囲みはじめた
(仕方ない…)
ティアがメノリに向かって右手をかざす
スッと瞳を細めた
周りの水がジリジリと迫る
凍てつくようなオーラがティアの足下から立ち昇る
短く、波打つブロンドの髪がなびいたその瞬間、木々の間から人影が飛び出した
「いい加減にしなよ」
人影はティアとメノリを遮るように立つ
紅の髪は短く、瞳は雷光のような金色
十四、五才の少女だった
「暴走しちゃったのね、……まったく」
黒い短パンに白いシャツ
シンプルな服装の少女は、メノリに近づき額に触れる
パチッと音を立てて光が小さく弾けた
ふらりと崩れ落ちるメノリをすかさずティアが抱き止める
「その子、まだ能力が不安定なんだ。あんまり感情高ぶらせないほうがいいよ」
「あなたは……」
少女は鮮やかに笑って言う
「あたしはユリア。これでも王族よ」