六花の騎士
広場は手合わせが終わった事で緊張が解けたように騒めいている
ティアの腕前は六花の騎士として十分なものだった
………だが
「お前やるな!剣はどこで習った?」
「……故郷で習いました」
「だけど、あまり見ない剣筋だな。故郷って何処なんだ?」
レイドは軽い調子でしゃべっている
しかし、ティアに向ける瞳はどこか探るような色があった
故郷、その言葉を聞いてティアは一度だけ瞬く
「北の……サンヴェルジェという所です。田舎なのであまり知られてはいませんが……」
サンヴェルジェ……それをを聞いて一瞬だけレイドが表情を変えた
だが、それを隠すようにいつもの飄々とした態度に戻ってしまった
「そっか。お前見込みあるよ、これからもよろしくな!」
含みのない笑顔で差し出された手をティアは握り返す
彼は何かを探りたかったのかもしれない……しかし、ただ単純に騎士に成り立ての自分を歓迎してくれているのだと、彼を見ていて思った
もう日は暮れた
外では冷たい雨が降り注いでいた