六花の騎士



なぜ……?




ユリアは叫んだ


「このバカ!そんな顔でどこに行こうっての!?簡単に丸めこめると思ってんの、ざけんな〜〜〜!!」



力いっぱいさけんだ
後ろにいるトーワとミハエルはその声に鼓膜がビリビリと震えるのを感じる


(こいつ、雷の属性だからか!?どっからこんな声出してんだ!)


だが、とトーワは思う

痺れるように響く声は馬車の中でも良く聞こえるだろう


おそらくユリアたちに気付いているだろうが、馬車は止まる気配がない

ここはもう王都を出てすぐの山道
道がキツくなり追いかけにくくなってしまう


「ミハエル!」


ユリアが叫べば、ミハエルは心得たように頷き馬をかって恐ろしい速さで馬車の前に出る
馬車は慌て止まった


その馬車から転がり落ちるようにマリオンは出てきた
狼狽えながら雨に打たれるのもかまわず言った


「なっなんでこんな所まで!?」

「あなた……帰って来る気ある?」



落雷のように響く声でなく静かな声音で問いかける

騎乗している2人を見上げマリオンは言葉に詰まった


金色の瞳は不安を滲ませて、しかし強い意志を持ってマリオンを見据えていた







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