六花の騎士



『今日はアールグレイにしましょうか?』



優しく微笑む
口ひげがそれに合わせてふさりと動く



『珍しいお菓子をいただきました』


『しっかりお勉強なさって下さい!』


『ユリア様は剣術など習わなくてもよいのですよ』


剣を習いたいといえば苦笑して膝をつく

いつもユリアに視線を合わせてくれる



『私が貴方をお守りするのですから』











最後の最後までユリアを守ってくれた









トーワは血が滲むほど拳を握りしめる



(あのとき、俺が止めていれば…………!)


トーワとユリアが乗った馬はギリギリで土砂や木をよけた



「ミハエル!ミハエル!」


悲痛な声を聞くに堪えなくて、トーワは目を背ける


土砂を掻き出す華奢なユリアの手


「マリオン……!?ミハエル、ミハエル!!」



かなりの広範囲に土砂が広がっている
ミハエルもマリオンも………


二人を探すように必死に土を掻き出す
無駄だとわかっていてもやらずにはいられなかった







「やだょお………」




絞りだした声は雨音に飲まれた











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