六花の騎士



アハハと笑いあう
二人はパシャパシャと水を蹴ながら歩いていく


「伯爵っていっても王族を気軽に自分の屋敷に呼ぶなんて出来ないけど、王族が王族の人を誘って休暇を取ることは問題ないからね」


ふーん、と生返事を返してメノリはつまらなさそうに呟く



「……貴族ってめんどうなのね」


「でも、王族になってから色んな人に逢えるから……楽しいよ」



メノリは隣を歩くユリアの瞳を見た


どこか遠くを見つめる金の瞳は寂しげな色が漂っていた

誰かを思い出しているようにも思えた
だからメノリはポツリと
呟いた


「……悲しい?」

「えっ?」


意表をつかれてユリアもメノリを見た
メノリの碧い瞳はただ真直ぐユリアを見つめる


「だってね、ユリアは私と話す時恐がってた。ちょっとだけだと思うけど……。色んな人と出会えるってことは、その分別れもあるでしょ?」


ユリアは瞳を見開く
メノリの瞳は澄んだ水のような透明さしかない


「だから……悲しそうなのかなって……」



メノリは小さく笑ってみた
緊張したような沈黙の後、ユリアはふぅっと、肩の力を抜いてくしゃりと笑った


「そうだね……悲しい」







不意にユリアはメノリから顔を背ける
そうしなければ、頬を伝う熱い雫に気づかれてしまうから


メノリは何も言わなかった

優しい沈黙と小川の水音だけが流れていた






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