六花の騎士



ザワリと、全身の毛穴が開くような感覚
足下から脳天を突き抜けた感覚は言い表わせない


一瞬揺らいだ視界が最後に見たのは、乾杯をする人々とアルフレッドを真っ直ぐに見るミラの深緑の瞳





あぁ…………



マリオンの言葉が頭中を反芻する




応えたつもりはなかった
だが、何かに捕まれた感覚はあった








「ウォルター伯爵?!」


誰かが声を上げた
そして、視線はアルフレッドに集まり静まり返る


どれくらいの沈黙だったろう?
もしかしたらほんの数秒だったかもしれない
それを破ったのは歌うようにしゃべるアルメリアだった


「あら、本当におめでたい日ね。新しい天使の誕生だわ」


紅く豊かな髪をなびかせてアルメリアは微笑んだ


「お祝い申し上げますわ、ウォルター伯爵」



人々は戸惑いながらもアルメリアにあわせて手を打った
拍手が響く会場で、アルフレッドは呆然と自分の姿をみた


額にかかる前髪を、手に持ったグラスに映る自身の姿を





母譲りのくすんだ金色髪は燃えるような緋色に変わってしまった…………








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