六花の騎士
少女は純白の衣装を身に纏い、静かに神殿の奥に歩む
空気がややざわめき、そこに集まる人々は少女を好奇の目で見つめた
なぜかと言うと、六花の騎士はたいてい軍隊から実力のある者が抜擢される
年齢は関係なく選ばれるがこの少女は軍隊でもなく、名も知られていない様な者だったからだ
そして、もう一つ驚くことに少女はすらりとした体躯にブロンドの髪、紫紺の瞳と雪の様に白い肌
まさに絵に描いたような美少女だった
異様なのは少女の右目には包帯が巻かれており、瞳をすっかり隠してしまっているところだ
(ふんっ、どうせ顔でとりいったのだろうて…)
(でしょうな、アルメリア様は美しい物にご執心であられるからのう)
嘲りに満ちた声が神殿の隅に落ちるが、少女はそんなことも耳に入っていないように端麗な面立ちを動かすこともない
無表情な顔は感情を感じさせない
そして、一段高くなった祭壇の前までくると、少女はその場に膝をつき祈る様に手を握る
そこで、ややざわついていた人々が一斉(いっせい)に口を閉じた
号令に伴い祭壇の横の扉から2人の人影が現れた
1人は長身の男性
身に纏うのは、六花の騎士の証である白を基調とした軍服
六花の騎士は1人ひとり異なった色を白い軍服に使っている
少し長い黒髪の彼は、深い紫を軍服にあしらっていて良く似合っていた
その彼がエスコートして来た貴人こそ、この世界唯一の王族その人である