六花の騎士
オーガレスは、ハッと覚醒する
ティアが剣をふるう姿を最後に、流れるように何かが見えた気がした
しかし、それが思考にかかる前に現実に引き戻された
「……ティア」
隻眼の紅瞳が色を深くして、間近で見上げている
まるで走馬灯でも見ているかのような感覚だった
オーガレスはティアの腕を掴み瞳を真っ直ぐに見つめようと顔を覗き込んだ
紅い右目と紫紺の左目を
「君は……なぜ?」
オーガレスには解らなかった
「君の過去も見えた。だからこそ解らない。なぜ?………なぜアルメリアを許せる?」
先ほど流れ込んできた映像には少なからずその時、その状況の感情も流れ込んできた
だが、ティアのアルメリアに対する憎しみや憤り……そんな負の感情は感じられなかった
「……兄さまは……復讐など望んではいません」
掴んだ腕が小さく震えた気がした
オーガレスの混乱する頭がスッと冷める
簡単なはずがない
たった1人の肉親を殺されてそう簡単に許せるはずはない
理由はあるだろう
だが、それは今聞くことではない気がした