六花の騎士



最初は、まず似ていないと思った


儚げな印象だが凛とした強さを持った少女だった


兄と同じ力を持った少女



まだ短い期間しか時を共にしていないのに

少女が微笑めば

胸の奥底で凍り付いた何かが解けるような気がした



自分に騎士道と呼べるものがあるのかわからない



けれど、何にかえても護りたいのだ


かつて何もできなかった幼く無力な自分はもういない













まだ、空が薄く暁に染まるころ
主人より早く起きるのは騎士にとって当たり前の事だ
すぐ隣の部屋、扉一枚を隔ててメノリが寝ている


ティアは白い軍服を隙間なく着て支度をすませる
仕事の書類などに目を通しておこうかと思ったがふと、まだ寝ているであろうメノリの顔が見たくなる


そんな思いに至ったのは初めてだ
普通は侍女がメノリの朝の支度をすませたころにティアが迎えに行く
と言っても、メノリはたまに寝坊することがあるので支度をしているところに出くわすこともしばしばある


その時のメノリの慌てた表情を思い出して可笑しくなる


………可笑しくなるなるのだ









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