六花の騎士



メノリのいる部屋へ続く扉を開こうとしてぴたりと手を止めた


メノリが起きる時間まで、まだ少しある


全てを殺したつもりだった


ここへ来てからティアの中で殺したはずの感情が、また温かみを帯びてきている


自分の中の扱いかねる感情に困惑しながらも、少し寝顔を見てから仕事に取り掛かろうとドアの部に手を掛けた



扉を開きかけて何か違和感を感じる
しかし、そのまま扉を開いてティアは息を呑んだ


「メノリ様?」



隻眼をいくら見開こうとも部屋の中央にあるベッドにメノリの姿はなかった












「どういう事だ?」

「私にも……わかりません」


ティアはグッと拳を握り締める
メノリは忽然と姿を消した
ウォルター邸のどこを探しても見つける事ができなかった


アルフレッドもいつもの鷹揚な態度ではなく少々焦っていた


「すぐ隣の部屋だったんだろう!?なぜ気付かなかった!」

「やめなさい、トーワ」


苛立ちを隠すことなく声を荒げたトーワにアルフレッドは強く嗜める
今は言い争う時ではない


ティアのは真っすぐに睨み付けてくるトーワに言い返す事ができるはずもない
強く唇を噛んだ


「……申し訳ありません」


苦く呟くティア
ため息をついてアルフレッドは考えるように口元に手をやる


「……とにかく、メノリの捜索範囲を広げて……」

「待ってくれ」


突然開いた扉
そこに居たのはオーガレスだった
走って来たのか息が少し乱れていたが一つ息をついて呼吸を整えた







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