六花の騎士



温室のベッドの上


アルメリアはソレに寄り添うように身を縮める
深緑の豪華なドレス姿は立てば百合の花のごとく美しい
大人の色香が滴るようなアルメリアだが


その仕草はまるで幼い子供のようだ



「ねぇ……アルセリア」


アルメリアは呟く
楽しげに


「ねぇ……ねぇ?」


けれど


どこか哀しげに



手をついてアルメリアが上半身を起こすと、温室の扉が開いた


「ご機嫌うるわしく、アルメリア様」


申し訳程度に挨拶をして青年は温室に足を踏み入れる
その青年には目もくれず、青年が持っているモノを見てアルメリアは微笑む



「ふふふ……いらっしゃい」


その言葉は青年に向けられたものではなかったが、青年は笑った
そのまま手に持ったものをベッドの手前に横たえる


アルメリアはベッドを降りてソレの前に膝をつく


「可愛いかわいい天使さん。いらっしゃい」


白く細い手でそっとその頬を撫でた



メノリは身動ぎ一つしないままかたく瞳を閉じていた


麗しい表情で微笑むアルメリア
しかし、その琥珀の瞳には狂気の光が宿っている



メノリをつれてきた青年はその姿をみて嗤う
そのまま踵を返した
肩口までの黒い髪がさらりと流れた






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