六花の騎士



ネイテル城には王族が住まうための離宮がある
その一角にアルメリアはいた


森林を思わせるその離宮はガラス張りになっており、樹木が植えられていた
その中央には天蓋(てんがい)付きのベッドが置いてあった
そのベッドに誰か横たわっているが、天蓋のレース状のカーテンで顔は見えない


「アルメリア様」


声をかけたのは、式でアルメリアをエスコートした六花の騎士の一人
オーガレス・セドリックであった


肩にかかるほどの黒髪に赤い瞳が印象的だ
白を基調とした軍服に深い紫を合わせてバッチリと着こなしている
一般的に彼は、相当な美形であろう、しかし目の前の女性を前にしては彼さえ霞む
女神さえもひれ伏すであろう


ベッドの横に頬杖をついてクスクスとアルメリアは笑った
宝石の様な琥珀色の瞳を楽しげに細める


「なあに?」


幼い子供の様に笑う
アルメリアは見た目は20代前半に見えるが、実際は長い時を生きている


王族の中には稀に不老長寿の者が出るが、アルメリアはいい例である


「ティア・ローズのこと?フフ、可愛かったわよねぇ」


オーガレスの方は向かない


「そうですね。なかなかいないタイプの女性かと」


不敵な笑みでオーガレスは答える


「しかし何故、わざわざこのような抜擢を?」








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