泡姫物語
今日の帰りにお見合いのことを愛子に報告した。

「それは心配だね。でも、本人にその気がないなら大丈夫だって」

「そうだといいんだけどさ。すごく素敵な人だったりしていいかもって思ったりしたらどうしようって考えちゃうんだ。そうなったら私は太刀打ち出来ないもん」

落ち込んで伏し目がちな私の肩をぽんと叩く。

「大丈夫だって!もし、万が一ね、藤田さんがその人をいいなって思ったりお見合いに前向きな発言をしたら友紀も思い切ってアタックしちゃえばいいんだよ」

「アタックって?蘭である以上、藤田さんに遊びに来て貰えないと会えないし、仕事以上の交流はお店で禁止されてるから、どうしようもないよ」

「もぉ。それじゃあずっとお客さんのままじゃない。その壁を突破することが恋愛成就に繋がるんだよ」

私はルールや常識に囚われすぎていた。
壁を越えるにはどうしたらいいか、ずっと考えていたけど答えが見つからなかった。
でも見つからないのは私が凝り固まった考えから逸脱出来なかったからだったんだ。

「だからさ、もし藤田さんが恋愛しちゃいそうになったら友紀も立候補すればいいの」

「こ、告白ってことだよね?どうしよう、告白なんてしたことないよ」

「今から考えても藤田さんに会えるまで一週間あるんだし、第一、お見合いがうまくいかないかもしれないんだから今は気にしない気にしない」

落ち着いた口調で私をなだめた。
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