泡姫物語
私の話を静かに聞いたあと微笑みながら口を開いた。

「君はこの仕事を嫌々やっている感じではなさそうだね。好きでやっているというふうには思わないけど、ちゃんとお仕事として捉えることが難しい職業だと思っているから無理して頑張っているんじゃないかと心配だったんだ」

そんな風に考えてくれていたなんて思いもよらなかった。

「正直、興味本位だけの軽い気持ちで業界入りしてしまったのは安易過ぎたんじゃないかと反省したこともありました。だけど、たくさんの方々から話が聞けることは魅力的で、思ったより辛い仕事でもないので気が付いたら長続きしていました」

「そうなんだ。それならよかった。僕が心配するなんて余計なお世話だったかな」

「そんな風に考えてくれる方なんていなかったからむしろ嬉しいです!」

会ってから、たったの一週間。私があれこれ考えていた時に藤田さんも少しは私のこと想ってくれてたんだってことがすごく幸せに感じる。
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