泡姫物語
「その時のお相手が前までお世話になってたっていう人?」

「そう。風俗店なんて初めてで勝手が分からないまま僕がもやもやしていたことを洗いざらい話すと彼女は……ちょうど今君がしてくれているようにそっと手を握って優しく話を聞いてくれたんだ」

私は無意識に藤田さんの手に触れていた。

「僕は独身だし実家暮らしだから生活費があまりかからなくて、それなりに遊べる余裕があってね。それからは頻繁に遊びに行くようになったんだ。そのお陰でずいぶん気持ちに整理がついた。プライベートでの新しい彼女が出来る気配は全くないけどね」

私はその女性に嫉妬した。
先に私と出会っていたら私が彼を包み込んであげられたのに。

――なんだかその女性がいなくなったからその代わりに私が選ばれただけのような気がして、私に彼女の面影を見ていると感じて、切ない気分になってきた。
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