泡姫物語
「おはようございまーす!」

「蘭さん、百合さん、おはようございます。今日もよろしくお願いします」

私と愛子は吉原で働いているソープ嬢。

仕事上での名前を源氏名といい、私は蘭、愛子は百合と名乗っている。

もともと稼げそうなイメージと興味本位で始めたこの仕事だが、今やこの店『ピンクゴールド』での人気トップは私と愛子で独占している。

吉原という住所はない。
台東区千束が現在の地名で、昔この場所が歴史上よく知られる吉原だったため通称吉原として今も形態を変えながら継承されている。

吉原で働く女は借金苦だというのは昔の話。

今ネイリストの勉強をしていて自分のお店をもつために資金を貯めている子

大学や専門学校へ通っていて普通にアルバイトをする子と同様に卒業まで頑張る子

語学や修業のため留学資金を貯めてる子

OLをしながら海外旅行費や結婚資金を貯めてる子

もちろん今でも借金やホストなどが理由の女の子がいないわけではないし、きれいごとを言うつもりはないけど、みんな夢や目標をもって頑張っている。

私たちにも目標がある。

私の夢は昔から変わらず、お嫁さん。
子供を3人くらい作って専業主婦をしたいから、結婚して生活していけるように可能な限り貯めておきたいの。

そんな事より相手が先だってよく愛子に言われるけど、いつ出会えるかわからないじゃない?

愛子は製菓学校を出て洋菓子店で働いていた元パティシエだから手づくりスイーツを出すカフェを開くのが夢。

お互い目指す道は違うけど、どっちが先に達成できる?なんて切磋琢磨する良いライバル。

肝心の仕事内容はホームページや店頭の写真で指名され、個室に案内して接客をし、お相手した人数分のお給料が貰える。

お店により接客時間、料金が異なり高級店と呼ばれる高い店は総額10万円を越えるところもあるが、格安店といって1万円そこそこで入れるお店もある。

私たちがいるのは中級店でソープでは1番オーソドックスなお店。

お客様から指名が入るまでは控室で女の子たちと他愛もない会話をしたりして待機している。
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