泡姫物語
髪型が崩れてしまうかもしれないが帰りにお披露目することにしよう。
私は軽くメイクを直した後、巾着にGPS付き電話と必要最低限のお金が入った小銭入れを入れて控え室を出た。
するとドアの外に愛子が立っていた。

「わぁ!びっくりした。愛子か。よかった、間に合った。先にこの姿見てほしかったんだ。どうかな?」

「うんうん!すごくいいよ!やっぱり阿部さんにヘアメイク頼んで正解だったね。そうそう、ちょっと中腰になってくれる?」

愛子に言われるがままに中腰になると私の後ろに回りこんだ。

「はい、完成!これで完璧だね」

そう言って愛子は手鏡を私に見せた。頭にはひまわりと同じ色のかんざしが刺さっていた。

「着付けしたあと探しに行ったんだぁ。偶然いいのが見つかってよかったよ」

至れり尽くせりとはこのことだろうと思った。
私の恋愛のためにここまでしてくれるひとがいる。
なんて幸せ者なんだろう。

「ありがとう!私、頑張るね!」

愛子に見送られ螺旋階段を下りていった。
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