泡姫物語
階段を下りたらいつものようにボーイが藤田さんを案内してくる。
黒い甚平姿と下駄で、花火にピッタリの格好だった。
浴衣に似合う格好って甚平のことだったんだ。

「こんばんは。甚平お似合いですね」

「君こそ浴衣がよく似合うね。一段と綺麗だよ」

近くにいるボーイそっちのけでお互いを褒め合った。

「タクシー到着しました。こちらへどうぞ」

吉原という場所は最寄り駅というのがない。一番近い駅でも徒歩20分くらいかかる距離にあるため、駅と店の間は送迎車を利用するのが普通で、他にはバスやタクシー、自家用車などで移動する。

タクシーに乗り込み、初デートが始まった。
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