泡姫物語
私たちの食事が終わるのを見計らったかのようなタイミングで最後の花火が大きく上がった。

特大の花火が一気に何発も打ちあがり、夜空が一瞬昼間のように明るくなり、さぁっという音を立てて消えていった。

花火が終わり、私たちの初デートも終盤へと近づく。

このままここに泊まりたいな。でも帰らないと責任追及されるのは藤田さんだし、私も辞めさせられちゃう。

「今日は楽しかったよ。ありがとう」

「私こそ、素敵なデートをありがとうございました」

もっと私に行動力があったら、ここで好きだと言えたのだろうか。このまま一緒にいたいとわがままを言えただろうか。

変な大人の常識にとらわれている私はそんなこと出来ない。

結局何も変わらずに終わってしまう――そう思ったときだった。

「じゃあ、行こうか」

そう言って藤田さんは私の手を握った。
よく考えたらこの初デート、私より藤田さんのほうから大接近してくれた一日になったな。

そのあとお店に着くまでふたりは手をつないだまま帰った。
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