眠りの森
プロローグ
「フィーネ。」
 おじいちゃんの優しい声。わたしはこの声が大好きだった。
「フィーネ、お前は人より少し違うだけなんだ。」
 おじいちゃんの口癖。本当は少しだけじゃない。けれども、こうやっておじいちゃんは私を慰めてくれる。
「フィーネは特別なんだ。」
 特別。でも、こんなもの、いらないのに。
「絶対にフィーネは幸せになれる。」
 本当なの?わたしがそう問うと、おじいちゃんは笑う。その深く刻まれた皺でくちゃくちゃになった顔がわたしは好きだった。
「もちろん。」
 でもね、おじいちゃん。わたしは今とても不幸せなの。おじいちゃん。
 わたしはいつになったら幸せになれるの。
 言葉にはできない。だけど、大丈夫だと言うようにおじいちゃんはいつも笑っていた。
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