眠りの森
 全身に痛みが走る。息が出来ない。
 彼が遥か遠くにいた。わたしは、一体どこにいるのだろう。
「君!」
 目の前がぐるぐるしている。ぐるぐるぐるぐるぐるぐる!
 頭が痛い。痛い。

 目の前が緑色だった。エメラルドグリーン。
 痛みもなくなっている。
 自分の手を見下ろしてみると、緑になっていた。いや。緑色の光に包まれていた。
 これは一体なんなのだ。わたしはどうなってしまったのだろう。

「フィーネ!」
 ザインさんがわたしの名前を呼ぶ。もう帰ってきたんだ。
「アルジャン!何があったんだ!」
「魔封具に触ったら急に・・・。」
「リンナを呼べ!」
「誰ですか!?」
「眠りの森に住んでる魔女だ!」
 言葉は聞こえる。二人が何を話しているかも。だけど、頭がそれを飲み込んでくれない。
 わたしはどうなってしまうんだろう。
「ザインん。」
 ねっとりとした口調。リンナさんだ。
「心配しなくてもぉ、良いのよぉ。」
「どうして!?」
「アルジャンくんのぉ、魔力がぁ、フィーネにぃ、ぴったしだったのぉ。」
「は――?」
「つまりぃ、」
 何かがわたしの額に触った。急に体の力が抜けて、ぺたりと床に座る。
「アルジャンくんがぁ、フィーネにぃ、魔力をぉ、使われるってことぉ。」
「はい!?」
「だからぁ、しばらくぅ、あたしのぉ、家でぇ、雑用をぉ、してねぇ。」
 彼の顔がたちまち青褪めた。
「フィーネぇ。」
 リンナさんに呼ばれて、わたしは顔を上げる。
「これでぇ、あの子をぉ、助けられるわよぉ。」
「・・・。どうやって?」
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