眠りの森
「あの子のぉ、精霊をぉ、使うぅ、力をぉ、フィーネがぁ、頂くのぉ。」
「頂く?」
「そぉなのぉ。」
 精霊視もいらないのに。ユーファの精霊を使う力を、わたしが盗る。嫌だ。いらない。
 でも、それでユーファを助けられるなら。わたしは幸せになれる、かもしれ、な、い。おじいちゃんが言ったように。
 わたしはゆっくりと頷く。わたしはユーファを助けたい。
「決まりぃ。」
 リンナさんが嬉しそうにわたしの頭を撫でる。犬か猫にするように、くしゃくしゃに。
「決まったらぁ、急いだ方がぁ、良いわよねぇ。」
 リンナさんが呪文を唱える。聞き取れないくらい、小さな声で。
 その声が途切れたと思うと。わたしたちはあの家に帰っていた。
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