眠りの森
 誰もわかってくれなかった。おじいちゃんしか。だけどわたしはこのことを、みんなに伝えたくて。だから嫌われて。
 森を歩くと、いつも精霊がわたしの周りにいる。わたしの周りを踊っている。
 どうしてわたしには精霊が視えるのだろう。だから、わたしは。
 精霊が見えたっておじいちゃんにはもう会えない。大好きなおじいちゃんにはもう、会えないのだ。
 いつもの道を歩く。でも、わたしには、おはよう、ひさしぶり、と言えるような友人はいない。
 誰もわたしを知らない。道を行く一人の少女としか、思わない。
 ザインさんのお店は、誰も通らないところにある。裏道の、裏道。だけどわたしはザインさんのお店が好きだ。色々な珍しいものがあっておもしろい。
 かわいらしい天使の鈴かドアの前にかかっているのがザインさんのお店。わたしがドアを押すと、天使と同じぐらいかわいらしい音がした。
 もので溢れかえった薄暗いお店の奥。そのカウンターでザインさんが古めかしい本を読んでいる。
 紫に似た青い髪の色が鬱陶しそうにザインさんの目を隠している。それでもその奥のオレンジ色強い光を放っていた。
「ザインさん。」
 わたしが名前を呼ぶと、ザインさんは顔を上げた。
「フィーネか。」
 そう呟くとさらに奥に入っていく。そこにわたしは入れない。リンナさんが入っていったのは見たことがあるけれど。
 しばらく経つと、ザインさんは帰ってきた。手には小瓶を持っている。
 その小瓶の中には不思議な液体が入っていた。液体では、ないかもしれない。だってそれは七色に色を変えて光っていたから。でもどの色も大人しい色だ。
「綺麗――。」
 わたしは思わず見惚れてしまう。
「中々手に入らないものだからな。」
 それから、なぜリンナに、というぼやきにも似た呟きも聞こえた。
 わたしはそれを受け取りと赤いバッグの中に入れる。リンナさんはこれをどうする気なんだろう。
「ありがとうございます。」
 わたしはザインさんに頭を下げた。
「あぁ。」
 わたしはザインさんに背を向けて去ろうとする。
「フィーネ。」
 だけれどもザインさんに呼び止められた。
 わたしは不思議に思って、ザインさんに振り向く。
「リンナに愛想尽かしたらいつでも来い。」
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