眠りの森
リンナさんはその柔らかそうな唇に人差し指を当てた。妖艶に微笑む。
「フィーネがぁ、判断するのぉ。」
リンナさんがわたしの頭を撫でる。おじいちゃんの節くれ立った指とは違うのに、おじいちゃんみたいだ。
わたしはリンナさんに抱き付く。迷惑かもしれない。でも、今はそうしていたかった。
「あとぉ、あの子のぉ、利用価値をぉ、亡くすのぉ。」
「・・・。」
あの人たちのとってもユーファの利用価値は。精霊使いであること。
そんなことがもし、可能なら。わたしも、そうしたい。
「詳しい事はぁ、フィーネがぁ、フィーネの魔力をぉ、見つけたらぁ、教えてあげるぅ。」
「はい。」
「時は明日よぉ。忘れないでぇ。」
「ザインさん。」
からんころん、と、天使の鈴を鳴らしてわたしはザインさんのお店に入った。
するとザインさんは眉をしかめて、不思議そうな顔をする。昨日の今日なのだから当然だ。
と、わたしはリンナさんに《月の雫》を渡すのを忘れていたことを思い出した。帰ったら渡さなくては。
「フィーネ、どうした?」
「あの、今日一日ここにいさせてほしいんです。」
「リンナに愛想尽かしたか。」
そう言って立ち上がると、ザインさんは椅子を持ってきた。
「何日でもいればいい。」
「そんなんじゃ――。」
リンナさんに愛想を尽かしたのではない。人を、待つだけ。でも誰を待つのかわからない。
わたしは困ってしまった。何と言って言葉を続ければいいのかわからない。
そんなわたしの考えを見透かしたのか、ザインさんはわたしの頭に手を置いた。
「何でもいい。」
すると店の奥に入っていった。わたしはザインさんが持ってきてくれた椅子の上に座る。
ザインさんのお店には不思議なものがたくさんある。わたしは目の前にある、球体を見つめた。ベージュ色をしている。風も吹いていないのに、勝手にくるくる回っていた。
と。
「出かけてくる。留守番しててくれ。」
ザインさんは真っ黒だった。一昔前の魔法使いのようなフード付きのコートを着て、寒くもないのにマフラーを巻いている。フードは目深に被られていて、顔が見えなかった。
わたしはザインさんのあまりの怪しさに驚いてしまった。何か悪いことでもするのだろうか。
「どこに――?」
「仕入れ。」
「フィーネがぁ、判断するのぉ。」
リンナさんがわたしの頭を撫でる。おじいちゃんの節くれ立った指とは違うのに、おじいちゃんみたいだ。
わたしはリンナさんに抱き付く。迷惑かもしれない。でも、今はそうしていたかった。
「あとぉ、あの子のぉ、利用価値をぉ、亡くすのぉ。」
「・・・。」
あの人たちのとってもユーファの利用価値は。精霊使いであること。
そんなことがもし、可能なら。わたしも、そうしたい。
「詳しい事はぁ、フィーネがぁ、フィーネの魔力をぉ、見つけたらぁ、教えてあげるぅ。」
「はい。」
「時は明日よぉ。忘れないでぇ。」
「ザインさん。」
からんころん、と、天使の鈴を鳴らしてわたしはザインさんのお店に入った。
するとザインさんは眉をしかめて、不思議そうな顔をする。昨日の今日なのだから当然だ。
と、わたしはリンナさんに《月の雫》を渡すのを忘れていたことを思い出した。帰ったら渡さなくては。
「フィーネ、どうした?」
「あの、今日一日ここにいさせてほしいんです。」
「リンナに愛想尽かしたか。」
そう言って立ち上がると、ザインさんは椅子を持ってきた。
「何日でもいればいい。」
「そんなんじゃ――。」
リンナさんに愛想を尽かしたのではない。人を、待つだけ。でも誰を待つのかわからない。
わたしは困ってしまった。何と言って言葉を続ければいいのかわからない。
そんなわたしの考えを見透かしたのか、ザインさんはわたしの頭に手を置いた。
「何でもいい。」
すると店の奥に入っていった。わたしはザインさんが持ってきてくれた椅子の上に座る。
ザインさんのお店には不思議なものがたくさんある。わたしは目の前にある、球体を見つめた。ベージュ色をしている。風も吹いていないのに、勝手にくるくる回っていた。
と。
「出かけてくる。留守番しててくれ。」
ザインさんは真っ黒だった。一昔前の魔法使いのようなフード付きのコートを着て、寒くもないのにマフラーを巻いている。フードは目深に被られていて、顔が見えなかった。
わたしはザインさんのあまりの怪しさに驚いてしまった。何か悪いことでもするのだろうか。
「どこに――?」
「仕入れ。」