あの時に戻れたら【短編】

余命の過ごし方

お父さんは家に帰る前に旅行会社でパンフレットを貰いに行った。

「加奈子はどこに行きたい？」

小さな声でお父さんは聞いて来た。私は少し考えながら答えた。


「渉がまだ小学生になったばっかの頃に伊豆に行ったでしょ？ほら古い旅館、あそこにもう１回行きたいな」





私達家族は昔伊豆に旅行行った。当時お父さんは仕事が忙しくてあまり遊んでくれなかったから、私達兄弟はこの伊豆旅行が嬉しくてたまらなかった。それから、いくつか旅行に行ったけど、今でも伊豆が１番の思い出になっている。


「何だよ！沖縄とか海外って言わないのか？」


「うん、伊豆がいい」


お父さんは「へぇ〜」って言いながら伊豆のパンフレットを手に取ると、次はケーキ屋に向かった。


「ここのケーキ屋さん、私大好きだよ！」


「知ってるよ、だから来たんだろ。今、もう一人のお前が家で膨れっ面で待ってるからな。母さん達が帰ってくる前に２人で食べなきゃ。加奈子はどれがいい？」


「うーん…チーズケーキ！」


お父さんはチーズケーキを３つ買って家に帰った。



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