あの時に戻れたら【短編】
久しぶりにお父さんとデートをした気分で私はお父さんの腕に巻き付いた。お父さんは照れ臭そうだけど「いい冥土の土産だ」って笑いながら歩いてくれた。そっか…あと5ヶ月後…お父さんは死ぬんだ…。12月の20日、お父さんはクリスマスを待たずに死んでしまう。年を越すのを目標にしていたお父さんは、家族に見守られながら死んでしまうんだ。



家につくとお父さんは台所でガチャガチャ食器を出してケーキを乗せた。見ると…副菜を乗せるための和食器…お父さんのセンスの無さに笑ってしまった。


「何だよ!」


「ねぇ普通これに乗せない?」

私はガラスのケーキ用の器を取り出した。

「何だ!そんな洒落た食器があったのか!まぁいいだろ、これもセンスだ。」


お父さんはさっき先生に”妻は私がいなきゃどうしようもない”って言ったけど、本当はお父さんがお母さんがいないと、どうしようもない人だと思う。きっとそんなとこもお母さんは好きなんだろうな。



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