ムーンライト・リヴァース

君の横

私と時雨は屋上へ行った。

3年が引退した今、2年は有意義に部活動に参加している。

昔、時雨とは親友同士だった。

「美月はまだ立ち直れてないみたいだね…。」

今悩んでいることをズバリ当てられて、時雨が光に見えた。

「時雨は…?今でも明るいけど、翼君、しっかりやってくれてるの?」

「ううん。今でこそ毎日会ってるけど、そっけない態度とられるのは当たり前だよ。」

時雨の言葉を聞いて、私はまた黙りこくってしまった。

「光には話したの?」

時雨が気を使っていった。

「…まだ……。」

「そうだよね。簡単に口に出来るようなことじゃないもん。」

私が深く傷ついているのと同じように、時雨も、翼も、水木も…苦しんでいる。

立ち止まって、背中を向けて歩もうとしているのは、誰でもない自分なんだ。

それに気づいていながら、前に進めないのは、ただ自分が弱いだけ。

「私もまだ立ち直れてないよ。美月だってそうでしょ?」

「…うん。」

「でも、水木君はもっと傷ついているかもしれない。美月にあのことを思い出させるようなことをしたのだったら、たぶんそうだと思う。」

「……。」

「芸能活動して、美月と同じ学校に入ろうとしたのは、あの水木君だったんだよ。」

「苦しいのは私でも分かってる。水木が絶対に復讐したい相手は私なんだよ。手に入れたいものが手に入れられないんだから。」

「…美月…。」

「でも、それで復讐したって私が苦しむだけじゃない。時雨だって翼だって、前を向いて進んでいけてない。水木だって今だから私をいじめようとしているのだろうけど、きっとどこかで惨めな思いをしてると思う…んだ…。」

一気に心の叫びを口にして、少しめまいがしてきた。

時雨もさっきより、顔色が明るくなってる。

「美月がしっかりとした意思を持っているんなら、私は何もしない。今だって自分のされたこと、しっかり分かってるじゃない。水木君なんかに負けちゃだめだよ。」

負ける…とか勝つとかもうどうでもいい。

ただ、この学校を離れて誰も知らないところへ行きたい。

時雨の言葉がとてもにくく感じた。
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