それは、輝く星空のように
「それで・・・」


権造の表情が一変する。


「七尾春美は、追い出したのか?」


「いえ・・・」


とたんに、恭介の視界が揺れた。


「バカかてめぇは!?」


権造が立ちあがり、恭介の腹を殴りつける。


「俺がお前に求めたことは、そんなことか?」


頭をつかまれ、締め付けられる。


「あ・・・ぐぅ・・・」


腹を殴られた痛みも忘れて、恐怖におののく。


「俺は羽田にやらせろと、最初に言ったはずだが?」


もう一発、腹に拳が入る。


胃の中のものがせりあがってくる不快感が、喉まで来た。


「お前は、言われたこともできねぇのか?」


「・・・う・・・がはっ・・・」


「お前は、羽田があの家の娘と深い縁があることを知っていた」


獣は、止まらない。


「だから、羽田に指示を出すのをためらった。違うか?」


「・・・は・・・い・・・」


「俺はそんなことを、教えたか?」


権造の顔が眼前に来る。


「獲物を喰うのに最善の方法を避けるなんてことを、俺は教えたか?」


憤怒の形相が、そこにあった。


何も考えられない。ただ、恐ろしい。



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