それは、輝く星空のように

何でも屋・ナナオ改め羽田智徳は、憂慮していた。


「恭介のヤツ・・・」


あの後、依頼人の少女・・・七尾菜月とは『ハプスブルク』で食事をした後、別れた。


今は、アパートの自室でクラシックのCDを聴いている。


壁が薄いので、ヘッドフォンつき。


アパート・『雪村荘』


家賃が安く、名前も町名そのまま。


七尾菜月とは携帯電話の番号も交換しておいた。


何か情報を得たら連絡する、と約束して。


「見つかるわけねぇだろ・・・」


携帯電話を眺めて呟く。


ブー、ブー。


手の中にある携帯電話が震えた。


「ち・・・」


感情的に舌打ちする。


クラシック鑑賞は、彼の至福の楽しみである。


それを邪魔するものは容赦しない。


ヘッドフォンを外して、電話に出る。


「もしもし・・・ああ、俺だ」


相手は仕事相手だった。


「え・・・マジか」


いつもはロクでもない仕事の話だが、今回は違った。


「わかった・・・気をつける」


そう言って通話を切った。


智徳にとってはベストスリーに入る重大な話題だった。


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