それは、輝く星空のように
「一応言っておくが、俺が何でも屋だとは誰にも言うなよ」


「どうしてですか?」


「知られると色々面倒だ」


「だいじょびです、口は固い方なので心配せんでくださいっ」


ふと、タバコ屋のおばあちゃんが目に入った。


「ねぇ、おばあちゃん聞いて聞いてー。このカッコイイ人、実は知る人ぞ知る何でも屋さんなんですよー」


「おお・・・そうかえ・・・」


おばあちゃんに何でも屋さんを紹介してあげたら。


がしっ。


ズルズルズル・・・。


せんぱいにブレザーの襟を掴まれ、引っ張られる。


「ちょー、暴力はんたーいっ」


「お、ま、え、は、人、の、話、を、聞、い、て、い、た、の、かっ!?」


せんぱいが肩をゆすぶってくる。


「やー、ついついご紹介したくなりましてー」


「はぁ・・・」


彼がため息をつくと、肩にかかっていた力が抜けた。


それを見たら、急に申し訳ない気持ちになってきた。


「あの・・・怒っちゃいましたか?」


恐縮しながら訊いてみる。


「いや、怒ってはいない。呆れているだけだ」


「・・・すみません、悪ノリしすぎました」


わたしは素直に謝ることにした。


誤ることは罪ではない。誤りを謝らないことが罪だ。


「いいって」


羽田せんぱいが無愛想に答える。


昨日の穏やかだった人とは似ても似つかない。


案外、こっちが地なのかもしれない。


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