それは、輝く星空のように
「オラ、どきなさいよー!」


「テメェがどけや、ゴルァ!」


売り場はまさしく戦場だった。


金のために野獣となった主婦たちが、お互いにもみ合っている。


そう、ただ野菜のために。


転んだが最後、人ごみに飲み込まれて戦線に復帰できないだろう。


「ちょー、押さない、駆けない、しゃべらない、戻らないの精神を知らないんですかー」


「うるさいわよ、ガキんちょがっ!」


心の叫びも野獣どもにかき消される。


人との衝突は嫌いだが、こちとら生活がかかっている。


気合を入れて人ごみの中を強行する。


目指すは野菜っ!


「どいてくだっ・・・おぶっ・・・!」


誰かの足が引っかかって転びそうになる。


ああ・・・志を果たせずに逝くのか・・・。


お母さん、先立つ不幸をお許しください・・・。


「なに遊んでんだよ!」


たまたま近くにいた誰かに肩を支えられ、なんとか転倒を免れた。


「誰だか知りませんがありがとうございまーすっ」


顔を見る余裕もないので、背を向けたままお礼を言った。


人ごみを突き抜け、なんとか手を伸ばして野菜を取る。


「いよっしゃぁ!」


死に物狂いで取れるだけ取っていく。


なつきはやさいをかくとくした!なんちゃって。



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