それは、輝く星空のように
「ふぅ・・・」


家に帰り、わたしは一息ついていた。


静かで寂しい家。


柱には傷がついているし、床も歩くたびに音がする。


お母さんが取り返してくれた家。


ジャラララッラッラ~。


ケータイが鳴る。


・・・お母さんか。


着メロはシューベルトの『魔王』である。


「はい、あなたの偉大なるドーター菜月ちゃんですよっ」


『黙れクソミソ娘』


相変わらず口が悪い。


『悪いが、今日は仕事が楽しくてな。お前のクソまずいメシを食えなくなった』(訳・ごめん、今日は仕事が忙しいから夕食いらない。)


「・・・そう」


『・・・ごめん』


我が母にしては珍しく、申し訳なさそうに謝った。


「いいって。仕事なんでしょ?」


『ありがとう』


それで通話が切れた。


ありがとう、か。


感謝しなきゃいけないのはこっちなのに。


――いつも、お仕事お疲れ様。


もちろん、照れくさいからそんなこと絶対に口に出さないけど。


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