それは、輝く星空のように
「・・・あいつから、お前が便利屋をやっていることは聞いていた」


春美が切り出す。


・・・恭介め。


余計なことを、ペラペラとしゃべってくれる。


「・・・菜月は、お前だと気づいているのか?」


「気づいていないらしい」


この数日で、はっきりした。


どうも、あの頃のことは忘れているらしい。


・・・無理もない。


彼女にとっては、思い出したくもないことだろうから。


「気づかせるつもりは?」


「無い」


菜月に気づかせてはならない。


「俺だとわかれば、あいつは嫌でもあの時のことを思い出す」


「そうだな」


あの、忌まわしい日々。


父が死んだ、7年前。


菜月にとっても、智徳にとっても、地獄の毎日だった。


あんな毎日を、思い出させる訳にはいかない。


それは、彼女の平穏の障害となるものだ。


< 78 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop