消えた願望
逃げる
辛い事を一時でも忘れるには、それ以上の辛い思いをするといい。子供の頃、親と居るのが嫌で辛かった時安全ピンで腕をひっかく。血がにじむ。ほんの一瞬痛っ!と意識が痛みに集中してその瞬間だけは嫌な事が消える。何度かひっかくと少し楽になっている。子供ながらに自分を助けるためによくやっていた。なんとなく死にたい願望があった小学生の頃はコゲた物を食べるとガンになるというのを信じてトーストを真っ黒に焦がしてジャリジャリ食べた。嘘か本当かわからないが3日間寝ないと死ぬと聞いた時はコーヒー濃いめに入れて飲み、寝ないぞ~と頑張ったがまだ子供、気持ち良く寝てしまって努力は全て無駄だった。そんな小さな努力を重ねていたある日、お腹が痛くてトイレから出てきてリビングでうずくまっていると隣の台所から父が来て怒鳴った。 「手伝いもしないで何サボっているんだ。お姉ちゃんはちゃんとお手伝いしてるのに」 悪い子なんだねーお手伝いしなきゃいけない時間帯にトイレで立てなくなるくらいお腹が痛くなってしまう自分は悪い子だねー。お腹が痛いと言えないほどお腹が痛かった自分は悪い子供。涙がどうして出るんだろう…?腕をひっかきながら、このまま死ねればいいなぁ…なんて馬鹿な事を子供の頃は考えていた。大人になればわかる。そんな嫌な人からは離れればいい。逃げればいい。どんなきっかけでも構わない。もちろん世の中は私なんか辛いと思えないくらいの壮絶な経験をしてる人がたくさんいて命すら…自由にならない人だっている。わかっている、私は情けない甘ったれだ。何の我慢もせずにに嫌な人から場所から離れた。そう、私は16歳の時高校を中退して家から逃げた。…とは言っても家出ではないので姉のアパートに転がりこんだのだがとりあえず腕をひっか かなくてもいいかな。私そのものを全否定する人はもう近くにはいないんだから。働かなくては。