消えた願望
売れない芸人
花屋などでバイトをし、19歳の時に夜の商売へと移った。パブ&スナック。勤める前は恐ろしい世界だと思っていたが全く大真面目な世界でたまに変な客がいるくらいで後は綺麗な衣装を来て好きなお酒を飲み、思ったより給料を貰えた。21歳の時、好きな人が出来た。店の客ではあるが外でも会うようになって親しくなっていった。 「一応事務所には所属してるんだけどね、まだ仕事少ない芸人だから。あ!でも時間だけはあるから蘭ちゃんの送り迎えとか出来るし」 「ありがとう。…その事務所って有名な人いるの?」 「うん。アルファルファさんとか麺&スープさんとか…」 「ええぇー!すごいよいいなー!」 「僕も頑張ります…蘭ちゃんの為に!」 「でも清ちゃん有名になったら私なんて邪魔になって捨てられちゃう」 「有り得ないっ。ヒドいよも~僕が捨てられそうでびびってんのに」 「まさか…清ちゃんと一緒にいられて嬉しい。こんな私の側にいてくれるなんて優しいんだね」 「なんで『こんな私』なの?蘭ちゃんの側にいたい男はたくさんいるよ。蘭ちゃんファンに見付かったら殺されそう~」 「やだそれこそ有り得ない」 「待っててね。売れて稼いで蘭ちゃんに楽させるから…ってまだまだ遠い話か」 「思ってくれてるだけで嬉しい」 芸人のわりには?清春は真面目に付き合ってくれた。貧乏な子供時代で母一人子一人で育った。親思いの優しい人間だ。自分が恥ずかしくなるが清春は私を認めて尊重してくれる。しばし、忘れていた。腕をひっかいていた事など。 一人暮らしをする為に保証人とかで両親に会うことになった。無事アパートを借りたがその時もちろん父親とは話もせず目も合わせなかったから…まだ気付かなかった。後々目覚める事になる隠れた『願望』にー。